「あんこのおまじない」とリード調整

 4月15日に最終回を迎えたNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」。このドラマの中で3人のヒロインに受け継がれた「あんこのおまじない」がありました。以下に紹介します。

  •  小豆の声を聞け、時計に頼るな、目を離すな、何をしてほしいか小豆が教えてくれる。
  •  食べる人の幸せそうな顔を思い浮かべぇ。
  •  おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。
  •  その気持ちが小豆に乗り移る。
  •  うんとおいしゅうなってくれる。
  •  甘ぇあんこができあがる。

ドラマの中で使われていたフレーズですが、「料理の世界でも通じる」という人もいます。

 ところで、私は趣味でオーボエを吹いていますが、オーボエの音に重大な影響を及ぼすアイテムが「リード」です。ご存じの方も多いと思いますが、これがないと音は全く出ません。また、たとえあったとしても演奏で使える音が出る期間が、毎日使えば3日から長くて1週間なので、最低3本以上使えるものをローテーションしながら使う人が多いです。しかし、1本あたり3,000円前後かかり、楽器店等で試奏できればいいのですが、通販で購入すると試奏できないために使いにくいものを無理やり吹かなければならない人もいます。したがって、プロは基本的に自分で作りますが、アマチュアの中にも作る人がいます。私も高校時代、オーボエを始めたときに先輩からリードの作り方を教わったので、最初から自作のリードで演奏していました。

オーボエのリード

 話が少しそれてしまったのですが、「カムカムエヴリバディ」を見ていた時、このフレーズを聞いて「リード作り(調整)に使えるかも」と思いました。上のフレーズをリード作り(調整)に置き換えてみると以下のようになると思います。

  •  リードの声を聞け、何をしてほしいかリードが教えてくれる。①
  •  吹く人(自分)の幸せそうな顔を思い浮かべぇ。…②
  •  いい音が出る。いい音が出る。いい音が出る。…③
  •  その気持ちがリードに乗り移る。…④
  •  いい音が出るリードになってくれる。…⑤
  •  いい音が出るリードができあがる。…⑥

  ③~⑥については「材料(音を出すための外国産のヨシ)」に頼らなければならないため、自分でコントロールできる動作はあまりありません。(あんこの場合でも、煮る前に質のいい物を「選別している」はずです。)そこで①と②の部分をアレクサンダーテクニークを使って次のように動けるように計画してみました。

「頭と脊椎がいつでも動けることを思いながら、リードをじっくりと観察する」

「頭と脊椎がいつでも動けることを思いながら、自分が気持ちよさそうに吹いている状態を想像する」

 このプランに沿って実際に調整してみると、いつも以上に針金の交換時期を見つけることができたり、どの部分をどのくらい削ればいいのかが明確に分かり始めたりしたのか、数か月のブランクがあったものの、調整したものがすべて満足いく仕上がりになりました。

身体への指令を出すのは「自分自身」

 前回のブログで「頭と脊椎が動きやすくなることで自分全体が動きやすくなること」を手を使って模擬的に体験していただきましたが、実際にどのようにすれば自分のやりたいことに対して身体が動きやすくなるのでしょうか。各自で確かめることができるワークを紹介します。

  1.  簡単な動作(例:物を持つ、椅子に座る、字を書く等)を1つ決める。
  2.  1の動作をいつも通りにして、その時の動きやすさや身体の状態を覚えておく。
  3.  「頭が脊椎の上で動かない(固定されている)」と思って1の動作を行っていつも通りとの違いを比べる。
  4.  「頭が脊椎の上で自由に動く」と思って(ただしわざわざ動かす必要はない)1の動作を行い「いつも通り」、「頭が動かない」状態と比べてみる。

 いかがですか?多くの方が「頭が脊椎の上で自由に動く」と思ったほうが動きがスムーズに行えたと思います。

 ところが、同じ動作を続けていると、最初こそ動きやすく感じていても、だんだん元の動きにくい状態になっていくことを感じた方もいるのではないでしょうか。それは仕方がないことです。なぜなら、あなた方が今まで習慣的に動いていた動きに「全身が」戻そうとするからなのです。つまり、今までの動き方が「正しい」と思い込んでいる、または「慣れている」のでどうしても今までの動きに近づけようと脳が指令を出してしまうのです。

これを防ぐためには自分の身体に向けての指令、つまり「自分の身体に対する言葉かけ」を変えてみる必要があります。そして、その言葉を発するのは「(身体を)使う人本人」つまり「自分自身」です。初めのうちこそアレクサンダーテクニーク教師の指示で身体を動かしているように思っているかもしれませんが、教師はあくまでも「お手伝い」をしている存在で、実際に指示を出しているのは「自分自身」であることを自覚していただいた方が、より動きやすくなることを感じやすくなると思います。

 とはいうものの、「具体的にどんな言葉をかけたらいいの?」と思われる方もいると思いますので、私がオンライングループ実習レッスンで扱った「言葉かけ」の具体例を一部紹介しようと思います。

 「言葉かけ」の一例 

・頭と脊椎が常に動いていることを思って

・脊椎が柳のようにしなやかに動く

・首が楽になることを思って

・頭が脊椎から離れていくことを許して

・頭の中で小舟が静かにゆれています

・背骨が鎖のようにゆれています

 他にもいろいろな「言葉かけ」が考えられますが、より自分自身が動きやすくなる「言葉かけ」を見つけてより動きやすくなった自分自身を楽しんでみてください。

リード制作に必要な道具を安く揃えよう

オーボエのリード制作には様々な道具が必要ですが、大きく「楽器店で購入する必要があるもの」と「100均やホームセンター等で購入できるもの」に分かれます。リード制作に興味がある方々のために一覧表にまとめてみましたので、下記をご覧ください。なお、マシン等専用工具については高額のため省略します。

リード工具一覧表

◎は「楽器店で購入する必要があるもの」ですが、意外と少ないことが分かります。その他の道具も楽器店で購入することができるものもありますが、100均やホームセンターに比べて少し割高です(定規を海外のオーボエ専門ショップで実際に売っています)。つまり、身近にあるものを利用すればリード制作や調整に使う費用を抑えることができます。

この他にも、リード乾燥用スタンドは100円ショップにある「ネコ除けマット」を利用したり、マンドレルの代わりに細めの菜箸を使ったりすることもあります。また、購入するお店もホームセンター以外に手芸店や釣具店も利用できます。この他にも使える道具やお店があるかもしれないので、もし情報を知っている方がいらっしゃればお知らせください。

楽譜への書き込みはできるだけ記号(マーク)を使おう

twitterから

 twitterでこのような投稿が少し話題になっています。

 要するに、自分の楽譜の「汚さ」を自慢しているようですが、賛否両論があるようです。自分自身も中学、高校時代の吹奏楽部で同じように楽譜に書きまくっていたのであまり人のことは言えないし、「書き込んだ汚い楽譜で昔のよく練習していたことを懐かしがる」、あるいは「今、一生懸命練習しているんだぞ」というアピールをしたいと思っている人もいると思いますので、このタグについてのコメントはここでは控えますが、気になるのは「指揮者や指導者(部長やパートリーダーを含む)の指示は何でも書き込まなくてはならない」と思い込んでいるような方が多くいらっしゃるのではないか、そして、「彼らは楽譜の書き込み方自体を学んでいないのではないか」ということです。(違っていたらすみません。)

 そこで、ここでは楽譜の書き込み方について自分なりに考えたことをお伝えしようと思います。

 確かに合奏の中では「指揮者や指導者の指示」は音楽的解釈もあることなので重要だし、書き込まなくてはいけないこともあるのですが、もともとある音符や強弱記号、表情記号、速度記号などが見えなくなるまで書く必要はあるのでしょうか?もう少しそういった作曲者からのメッセージがよくわかる範囲で楽譜には書き込んだ方がいいと思います。

 では、どのようにすれば音符等も見やすくなるような書き込みができるのでしょうか?それは、「記号(マーク)」を利用することだと思います。例をいくつか示しておきます。

1 少しずつritしたあと、急にAllegroにテンポが変わるときには「指揮者を見る」必要がありますが、その部分に

上のようなメガネのマークをrit、またはAllegroの近くに書いておく。

2 ある部分のピッチが合わない時、よく「音を聞け」と大きく書いてある楽譜を見かけますが、これも

のような耳のマークを書いておく(この時に、どの楽器の音に合わせるかを楽器の略号で書いておくとなおよい)。

3 特定の音を高く(または低く)演奏する必要があるときは、その音に↑(↓)のように矢印をいれる。

4 管楽器で長いフレーズを吹くときにブレスを取る必要があるなら、その個所にv(ブレス)マークを書いておく。

5 長い休みのあとで演奏するときに自分の出るタイミングが分からなくなりそうなら、「その前に演奏している楽器が出てきたら準備しておく」とあらかじめ決めておいて(楽譜によっては影譜[小さい音符で書かれたもの]が書いている場合もある)、その楽器が自分の出る何小節前に始めるかを確認して、その小節に略号を書く。

等、いろいろあると思います。他にもいろいろな記号(マーク)がありますが、みなさんで作ってみるのもいいと思います。また、どうしても言葉で書く必要があるなら、ポストイット(付箋)に書いて楽譜に貼り付けておくのも1つの方法です。

 最後に楽譜に書き込むときに1つだけ心がけてほしいことを書いておきます。それは、

できるだけ濃い鉛筆(4Bがベスト)を使うことです。色鉛筆、ボールペン、マーカー等はもちろん、シャーペンも絶対に使わない方がいいです。なぜなら、音楽的解釈の変更やカット個所の変更等があった時に消すことができないからです。最近、消しゴムで消せるボールペンができていますが、完全には消せないし、無理すると楽譜が破れてしまう場合があります。また、シャーペンは消したときに意外と元の字の跡が残ってしまうことがあり、間違えて変更前の演奏をしてしまうおそれがあるからです。

 楽譜は演奏者(個人、団体どちらも)にとっては無くてはならない財産です。その財産を生かすも殺すも書き込み方にかかっているような気がします。楽譜を落書き帳のように扱うか、それとも宝物のように扱うか。どちらを選ぶかは演奏者次第ですが、将来この楽譜を使って別の演奏者が演奏することも考えた方がいいと思います。

 おまけ 楽器の略号(人によって書き方に若干のちがいがあります。)

(弦楽器) Vn…バイオリン Va…ビオラ Vc…チェロ Cb…コントラバス Gt…ギター E.G…エレキギター BG…エレキベース

(木管楽器)Pic…ピッコロ Fl…フルート Ob…オーボエ EH…イングリッシュホルン Cla…クラリネット B.Cla…バスクラリネット E♭Cla…エスクラリネット S.Sax…ソプラノサクソフォン A.Sax…アルトサクソフォン T.Sax…テナーサクソフォン Bar.Sax…バリトンサクソフォン Fg…ファゴット C.Fg…コントラファゴット

(金管楽器)Hrn…ホルン Trp…トランペット Cor…コルネット Trb…トロンボーン Eup…ユーフォニアム Tub…チューバ

(打楽器) Timp…ティンパニ S.D…スネアドラム B.D…バスドラム Cym…シンバル Glock…グロッケン(鉄琴) Xylo…シロフォン(木琴) Mar…マリンバ Tri…トライアングル Tam…タムタム(ドラ)

(参考:ヒビノ株式会社用語集(音響・映像・ステージ)

頭と脊椎が動きやすくなれば…

 はじめまして。アレクサンダーテクニーク教師(資格取得中)の嶋谷賢治と申します。2013年からアレクサンダーテクニークを学び始め、今年4月から実習レッスンを始めることになりました。上述のとおり(資格取得中)の身ですが、1日でも早く()を消すことができるように頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。

 さて、「アレクサンダーテクニーク」という言葉が最近芸術やスポーツの分野で少しずつ話題になり始めましたが、まだ「それって何?」とか「怪しい宗教?」とかまだまだ誤解されてたり偏見を持たれたりしている方もいらっしゃると思いますので、今回はどういったものかをできるだけわかりやすく説明しようと思います。

 「アレクサンダーテクニーク」をできるだけ短い言葉で表現するとしたら、「『頭と脊椎の動き方が人間の動作全体に影響を与える』ことを発見したF.M.アレクサンダーの考えに基づいた身体の使い方のワーク」といった感じです。頭と脊椎が動きやすければ腕や脚(足)が動きやすくなり、逆に動きにくければ、動きにくくなります。

 このことを体験する模擬実験を紹介します。次の手順で試してみてください。

  1.  片方の手を軽く握り、もう片方の手を写真1の形に作ります。軽く握った手を頭、写真の人差し指と中指を脊椎、親指と薬指・小指を腕とみなします。
  2.  握った手(頭)を、写真1の形を作った手(脊椎と腕)の人差し指と中指の先(脊椎の一番上)に押し付けるようにのせます。(写真2)
  3.  写真2の状態で脊椎とみなした人差し指と中指を動かし、動きやすいかどうかを観察し、記憶しておきます。この時、人差し指と中指が離れないように注意してください。
  4.  同じ状態で腕の役目をしている親指と薬指・小指を自由に動かしてもらい、動かしやすさを観察し記憶します。
  5.  いったん手を離します。
  6.  もう一度写真2の状態を作ってもらいますが、今度は握った手(頭)が人差し指と中指(脊椎)の先に触れる程度になるようにしてください。
  7.  この状態で3と4を行い、動きやすさを観察します。

 いかがでしたか?恐らく押し付けた時よりも触れる程度のほうが指(写真1で脊椎や腕とみなしたもの)が動きやすかったと思います。身体全体は頭と脊椎を通じでつながっていますので、腕だけではなく、脚にも同じように影響を与えてしまうのです。

 つまり、頭が脊椎を押し下げなければ人間はもっと自由自在に動くことができるのですが、実はストレスや日頃の習慣等でそのように動けないことがよくあるのです。そして、頭が脊椎を押し下げていることを自覚している人は少ないです。アレクサンダーテクニークを使うことでこの自覚を促し、頭と脊椎が動きやすくなることで自分全体が動きやすくなることによって、日常生活で身体が自由自在に動けるようになるだけでなく、芸術やスポーツ等で最高のパフォーマンスが発揮できるようになるのです。

 では、どのようにすれば頭と脊椎が動きやすくなるのでしょうか?その答えについては次回のブログで説明しようと思います。